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俳句とは
五・七・五の17音定型の日本の短詩のひとつです。同じく五・七・五の17音定型の川柳との違いは以下の通りです。
川柳と俳句の違いは?
歴史的相違
川柳と俳句とも、連歌(和歌における韻律(五・七・五と七・七の音節)を基盤として、複数の作者が連作する詩形式)を母体にしています。
俳句は、連歌の第1句=発句(五・七・五)の17音が独立、発展したものです。逆に、下の句(七・七)がお題となり、気の利いた上の句(五・七・五)にまとめることを付け句(つけく)と言い、これが川柳に発展していきます。
内容の相違
上記のような歴史的な相違などから俳句と川柳には以下のような特徴があります。
1.余韻と言い切り
俳句は、後続の七・七の言葉を連想してもらうために、読者に「余韻」を残す作品となります。
川柳は、後続の七・七の言葉をまとめ独立させたため、「言い切り」の形となり、読者に「言い得て妙」とうなづかせる作品となります。
2.自然と人間
俳句の対象は、自然そのもの(花鳥諷詠)で、ありのままの自然の姿を描きだす(客観写生)ことを目的としています。
川柳の対象は、人間そのものや、人間をとりまく様々な事柄で、風刺・皮肉を加味し、滑稽とあてこすりから人間の本質が生み出す笑い(ユーモア)を表現することを目的としています。
形式的な相違
季語、切れ字の有無
俳句は、発句が発展したもののため、発句にとっての約束事である季語、切れ字が必用となります。(自由律俳句など例外もあります)
川柳では特にこだわりません。
「作り方の決まり」
(1)『五・七・五拍』
俳句は定型詩ですので、五・七・五拍で構成されます。日本語が主体です。
拍とは、韻律(リズム)の1つで、ここではひらがな表記の場合の文字の数で数えられます。そもそも拍とは、言語学では1発音の長さの単位を指す言葉です。
そのため、十七文字、または十七音、十七語ともいわれるのが、世界最短の詩といわれる俳句です。
まだ明治時代からの伝統しかありませんが、俳人とは、俳句を詠んだり作ったりする人を指していいます。
ちなみに、かの有名な松尾芭蕉という俳号の人は俳諧連歌が盛んな時代に生きていたため、当時において俳諧師といわれていました。
(2)『季語』
俳句は余韻を大事にするため、季語を必ず入れなくてはいけません。季語こそが、季語が原則的に共有できる古来からの情緒や共感の母体といわれています。
(3)『余韻を残す』
俳句作りには、全体的で広い視野、一般常識的な見識が必要とされる場面もでてきます。その上で、テーマとなる事物や人の動きを活写することで、それらがさらに、ストレートに時代や風土の情緒をもたらします。誰にでも共感できる要素、つまり普遍性を有しているからです。
視界のなかでも、季節や旅情などのテーマを重要視し、抽象的で普遍的な思いをもたらすキーワードを選ぶことで、単なる描写の句に余韻が生まれます。同じ時代と風土の中の、生活者の作者の思いを共感的に読者に連想させる、俳句ならではのテクニックです。
(4)『切れ字』
俳諧と俳句には『切れ』があります。
『切れ』の直前に置かれた単語を『切れ字』と言います。
俳句は、短歌(5・7・5<上の句>・7・7<下の句>)の、下の句のほうがない形式になりますが、伝統的に、短歌のように2部形式に別けて鑑賞や作句をする傾向が残っています。
例を挙げてみましょう。
古池や 蛙飛びこむ水の音 芭蕉
『古池や』で『切れ』ていて、『古池や』の『や』を『切れ字』であるというふうにいいます。
『古池や』で句を区切ってみせ、余情を生み出すテーマを強調してみせます。
そのため、『古池や』の後に描写された『蛙の音』という一時的な作者の視界固有の情景に、『江戸時代の古池の情緒(『蛙の音』の前の静寂、豊かな自然の中の日常など)』という余情がプラスされてくるわけです。これを『余韻がある』といい、テーマの明確さと余韻を生み出す句切れは俳句の形式の1つともいわれます。
江戸時代の切れ字には、や、かな、ぞ、か、よ、らん、ぬ、ず、に、へ、じなど様々あります。
(5)『例外 字余り』
決まりの17文字より長くなっている句のことです。
五・七・五ではなく、六・五・七や五・八・五、五・七・六などのように、1文字分くらいどこかの句が余っている句を指します。
(6)『例外 字足らず』
決まりの17文字より短くなっている句のことです。
五・七・五ではなく、四・五・七や五・六・五、五・七・四などのように、1文字分くらいどこかの句が足りない句を指します。
(7)『例外 季語なし』
庶民的で闊達な流派などにおいては、無季語でもいいとされます。
(8)『例外 切れが体言止め』
松尾芭蕉の弟子である去来の作『去来抄』においては、松尾芭蕉の言葉として、以下の内容が描写されています。
曰く、「(俳諧の1句1句の中に)切れ字を入れる(ように決まりを作る)のは句を切るためで…<中略>しかし切れている句というのは切れ字によって切る必要はない。
いまだに句が切れている、いないが、わからない初心者のために、あらかじめ切れ字の数を定めている。
この定め字(すでに指定された切れ字)を入れれば(門下生等の作る)十(句)のうち七(から)八の句は自然に切れる。
しかし残りの二三(句)は切れ字を入れても切れないダメ句である。また入れなくても切れるいい句もある。」という強烈な批評が残されていて、現代人にも大変タメになります。
つまり、『切れがある』とは、テーマを明確に捉えられている、という意味なのでしょう。
また、江戸時代の俳諧で重要視される『切れ』は、必ずしも切れ字でなくてはならない、という決まりはないことが解ります。
5文字や7文字の名詞などが、体言止めなどといった形で、切れとされることが殆どです。
「俳句の作り方」
(1)『テーマを選びましょう』
旅行や日常の観察眼、イベントの感想、歳時記の季語などをヒントに、書きたいことを選びましょう。
同時に、俳句であるため歳時記から適切な季語をいくつか選んで書き出しておくと、より簡単に作ることができます。
(2)『主語と述語で10文字程度の描写や感想を書いてみましょう』
主語は名詞や体言です。テーマになりやすいのが主語です。
述語は動詞などの用言です。抽象物や物品、そして人や無生物などを目的語とする場合には、形容詞などの感想を添えるのが通常ですが、それらのいずれかを主体にしている場合、述部には動詞を使うと便利です。
動詞には、状態動詞と動作動詞とがあります。いずれも描写として有効な動詞ですから、情景のままを書き写すだけでも構いません。
このように、主語と述語を合わせることで、テーマが膨らみ、作者のいいたい情景がより動的に読者に伝わりやすくなります。
できるだけ上手く伝わりやすいように、組み合わせを工夫しましょう。
(3)『思い付かない際はテーマから連想してみましょう』
連想の元となるテーマを書き出して、それから連想することを書いていきましょう。
テーマの感想が生活に密着していない場合には、すぐには思い付かないことが多く、旅や特別な際に書き留めることで初めて句が作られたりするものです。
ですから、後になって連想したり、それによって思い起こしたりして作句するのも良い方法です。
1.まずは、作るに適当なテーマを視野のなかや季節から探したり歳時記一覧から選んだりして、メモしましょう。その言葉に切れ字をつけるだけで、『五・七・五』の3分の1ともなり得ますので便利な方法です。
2.次に、メモしたテーマについて連想されてくる、いいなあ、あるいはイヤだった、きついなあ、あるいはなごんだ、といった形容詞やそれらの反意語を書いていったり、関連する名詞を書き出したりしていくだけで、残りの音が埋まってきます。
3.うまく組み合わせれば、グッと完成に近づいた『五・七・五』が出来上がります。
あとは切れ字を意識したり体言止めにしたりという、テーマとその転結を明確にする推敲を重ねて、切れや余韻を作り出すだけです。
(4)『いい句を作るための、述語部分の膨らませ方』
テーマやそこから生み出されるキーワードは非常に重要です。
『古池や蛙飛び込む水の音』の名句からわかるように、形容詞や状態動詞だけではなく、『自然』とそこに生きる動物に焦点をあてた動作動詞も、普遍性を持ち得るため、切れによって大きな余韻を生むテーマへ直結しやすくなります。
また、テーマについて『懐かしむ』思いを書き出すことでも余情のある句を生み出し易くなります。
例えば、『夏草や 兵どもが夢の跡』という松尾芭蕉の俳句は、歴史が1つのテーマです。
古代から東北一帯いわゆる陸奥などを支配した、奥州藤原氏等の旧都平泉を訪れた松尾芭蕉は、夏草の物語る風土の記憶つまり歴史に圧倒されます。笠を打敷いて時が移ろうまで泣いたほど(出典『おくのほそ道』)の寂寞な思いが留められた、大変スケールの大きな一句となっています。
『夏草』も『兵ども』も、旅で訪れた松尾芭蕉とその弟子の目にした旅先の風景に直結する一大キーワードだと想像されます。
個人の体験が歴史という普遍性を帯びて壮大な一大詩となり、感動を生みます。
(5)『切れを入れましょう』
より普遍性の高いキーワードのほうを『切れ』に選ぶ癖をつけ、俳句の形式を整えてレベルを上げていきましょう。
なぜなら、『切れ字』に使われる古文文法の助詞には、直前の名詞とそれがかかっていく動詞を強調する機能があったり、しみじみとした思いを強烈にこめる機能があったりするからです。
切れの直前の名詞=キーワードをしっかり押さえることで、テーマを明確にしましょう。
例.
古池に蛙飛び込む 水の音→古池や 蛙飛び込む水の音
『古池に蛙飛び込む』の場合は、同じキーワードでも、『蛙』のほうが後から『水の音』を立てる主体となっているため、目立ってしまいがちです。
いわば、ナチュラルな主語と述語のつながりだけの文章がまずは出来あがりがちです。
そこで、『古池や(切れ字による強調)』の『や』という、『もがな・かな・や・ぞ・か』といった切れ字十八字から適切な音律となりやすい1字の切れ字を選んだと想像できます。
その切れ字によってより大きなキーワードの『古池』における『水の音』の発生を描写した句において動作の主体となった、より小さなキーワードの『蛙』が景色を変えうるという驚かれるべき日常性の露呈する瞬間の活写だけでなく、切れ字のある『古池』のもつ時代背景もしのばれてくる、というわけです。
『水の音』が切れにも使われる体言止めとなっていることから、音がした後に古池に戻ってくるであろう、蛙の『ぽっちゃん…』と飛び込む些細な音に気付けるほどの、元通りの静寂も余韻に加わっています。自然への注意力の高さが生み出す稀な句です。
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