かみにだんかつよう・上二段活用【超初心者向け俳句百科ハイクロペディア/蜂谷一人】




初めて文語を使う場合、間違えやすいものに動詞の活用があります。例えば「落ちる」という動詞を辞書で引いてみましょう。広辞苑では お・ちる(落ちる・墜ちる・堕ちる)(自上一)とあります。最初のお・ちるは読み方。次は漢字。自上一は自動詞上一段活用を表しています。ここまではすべて口語。本稿で重要なのはその下。文お・つ(上二)とありますよね。文は文語を表す記号。文語では「おちる」ではなく「おつ」だということを示しています。上二は上二段活用の略。文語「落つ」は次のように変化します。

落ちず 〔未然〕
落ちけり〔連用〕
落つ〔終止〕
落つること〔連体〕
落つれば〔已然〕
落ちよ〔命令〕

「落」の後を見てください。「ち・ち・つ・つる・つれ・ちよ」たちつてとの「ち」と「つ」の二段に渡っていますよね。だから上二段活用と呼ばれます。ローマ字にすれば ti ti tu turu ture tiyo

文語「起く」ならば
起きず〔未然〕
起きけり〔連用〕
起く〔終止〕
起くること〔連体〕
起くれば〔已然〕
起きよ〔命令〕

「起」の後は「き・き・く・くる・くれ・きよ」。ローマ字にすれば
ki ki ku kuru kure kiyo

「落つ」も「起く」も子音のtと kが違うだけであとは同じ。
i i u uru ure iyo  子音を変えればすべての上二段動詞にあてはまります。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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