俳聖と呼ばれる松尾芭蕉。俳句の師匠だと思っていませんか。残念。芭蕉は俳諧の師匠。では俳諧とは何でしょうか。「俳諧の連歌」の略で、五七五に七七をつけ、それに五七五をつけてゆく遊び。「連句」とも呼ばれます。連歌と形式は似ていますが、より身近で滑稽な題材を詠むところに特徴があります。もともと連歌の会のあと、お酒が入って少々羽目をはずすような宴で詠まれたと考えられています。わかりやすく言えば連歌がA面、連句がB面といったところでしょうか。では、今日 芭蕉の句として残っている作品は何なのでしょうか。あれは「発句」と呼ばれ、もともと俳諧の一番最初に詠まれる句だったもの。切れと季語を備えていました。この発句が独立して詠まれるようになったものが俳句なのです。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」