すずし「涼し(夏)時候」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




旅人の木という影の涼しかり  対馬康子「天之(2007)富士見書房」

旅人の木とは何でしょうか。響きに惹かれたものの、何かわかりません。調べてみると「マダガスカル原産のバナナに似た植物」だとわかりました。写真をみると、バナナに似た葉が扇のように半円形に並んでいます。和名は扇芭蕉。一説によれば葉柄に雨水を溜めて、乾燥地帯をゆく旅人の喉を潤したことから名付けられたそうです。マダガスカル航空の尾翼に描かれるなど土地のシンボルとなっているようです。

海外詠の多い作者ですが、この句ではマダガスカル。地球を飛び回っていることが伺えます。旅先の日盛り。影を作ってくれる植物が本当にありがたかったのでしょう。だから涼し。樹高は平均7メートルといいますから、影の大きさもいかばかりか。旅人の喉を潤し、肌の火照りを冷まして心まで癒してくれる大きな木です。

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(夏)

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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