首都を出てすぐ八千草の国となる 高山れおな「冬の旅、夏の夢(2018)朔出版」 八千草とは、秋の七草を初め秋に咲くさまざまな花のこと。日本ならば吾亦紅や刈萱、竜胆などが頭に浮かびます。この句には「ウランバートル」という前書きがついていますから、モンゴルの大草原のことでしょう。そこには秋、どんな花が咲いているのでしょう...
俳句の作り方
俳句の作り方の記事一覧
岡山へ行きたし桃を五つ食べ 西村麒麟「鴨(2017)文學の森」 よく言ってくれました。桃と言えば岡山。他県の方の不興をかってしまうかも知れませんが、岡山と桃のえにしは深いのです。だって駅前の銅像が桃太郎。新幹線を降りたあなたを最初に迎えるのは、犬猿雉を従えた凛々しい彼の姿です。 作者はよほど桃好きなのでしょう。五つも...
虫の音や私も入れて私たち 野口る理「しやりり(2013)ふらんす堂」 虫は秋鳴く虫の総称。「虫の音色にはそれぞれ風情があり、鳴いている所・時・数によって趣も違う。その声を聞くと秋の寂しさが身に迫って感じられる」と歳時記に記されています。では、あなたに質問です。この句の虫は何匹いるでしょう? 総称ですから、何種類かの虫...
人影をとほすひとかげ迎鐘 井上弘美「汀(2008)角川SSコミュニケーションズ」 迎鐘は「六道参(ろくどうまいり)」の傍題。八月の七日から十日までの間に、京都の珍皇寺(ちんのうじ)に詣でる盆の精霊迎えの行事の鐘です。寺の所在地は平安京の火葬地であった鳥辺野の入り口。この世とあの世の境に当たると考えられてきました。普通...
両の手は太古の器水の秋 木暮陶句郎「薫陶(2021)ふらんす堂」 「秋の水は透明で美しい。その曇りのないさまは、研ぎすました刀の譬えにも使われる。水の秋は水の美しい秋を湛えていう」と歳時記に。掲句は両手で澄んだ水をすくった時のことでしょうか。両手が器になったように感じられたというのです。 作者は陶芸家。さまざまな器を...
タレースの万物は水澄みにけり 有馬朗人「黙示(2017)角川書店」 「トルコ紀行十九句」という前書きがついている連作の一句です。タレースはトルコに生まれた哲学者。紀元前6世紀に活躍しました。ソクラテスの現れる以前、世界の起源について最初に哲学的な考察を行った人として知られています。彼は万物の根源を水と考え、存在する全...
盆踊りを睨むヤンキー 又吉直樹「蕎麦湯が来ない(2020)マガジンハウス」 「カキフライが無いなら来なかった」「まさかジープで来るとは」に続くシリーズ第三作です。有季定型ではなく自由律の句集。自由律とは、季語の有無や五七五にとらわれない作品のこと。尾崎放哉や種田山頭火が著名です。作者は、この分野の作品を多数発表して...
葉鶏頭喉を削つてうたふ歌 成田一子「トマトの花(2021)朔出版」 葉鶏頭は熱帯アジア原産のヒユ科の一年草。葉の形が鶏頭に似ていることから、そう呼ばれます。美しいのですが鋭い葉が刃物のようでもあり、不気味な感じを与える植物。喉を削ってうたふ歌」という措辞にぴったり似合っています。2010年に「第三回芝不器男俳句新人賞...
会ひたくて来たのに会へず西虚子忌 星野椿「早春(2018)玉藻社」 西の虚子忌とは、10月14日に比叡山横川の虚子之塔で行われる法要のこと。虚子は比叡山を度々訪れ、虚子之塔を建立。没後その遺志によって分骨が行われました。それが1959年の10月14日。その日を記念して毎年法要が行われるようになったものです。 この後は...
なんきんとかぼちゃどっちが好きですか 坪内捻典「ヤツとオレ(2015)角川書店」 ネンテンさんらしい、一筋縄ではいかない一句。本当はトシノリさんというらしいのですが、誰もそう呼びません。通り名はあくまでネンテンさん。必ず「さん付け」で 呼ばれる俳人は、ネンテンさんと子規さんくらいではないでしょうか。ネンテンさんの嗜好...
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