やちぐさ「八千草(秋)植物」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




首都を出てすぐ八千草の国となる  高山れおな「冬の旅、夏の夢(2018)朔出版」

八千草とは、秋の七草を初め秋に咲くさまざまな花のこと。日本ならば吾亦紅や刈萱、竜胆などが頭に浮かびます。この句には「ウランバートル」という前書きがついていますから、モンゴルの大草原のことでしょう。そこには秋、どんな花が咲いているのでしょうか。

首都、国という言葉遣いが目を引きます。首都は、モンゴル人民共和国のウランバートル。一方、国はもっと古い国のかたちを想像させます。帝国を築いたチンギス・カンの時代かも知れませんし、もっと古い国なのかも知れません。季節は秋。「天下の秋を知る」というように、時代の移ろいへの深い洞察が感じられます。

簡単な言葉で、二つの時代を描いた一句。首都を出て、ハイウエイを車で走って行くとすぐに大草原が広がる。地理的な移動が、ここでは時間を遡る移動と重なっています。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

 

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(秋)

 






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