にしのきょしき「西の虚子忌(秋)行事」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




会ひたくて来たのに会へず西虚子忌  星野椿「早春(2018)玉藻社」

西の虚子忌とは、10月14日に比叡山横川の虚子之塔で行われる法要のこと。虚子は比叡山を度々訪れ、虚子之塔を建立。没後その遺志によって分骨が行われました。それが1959年の10月14日。その日を記念して毎年法要が行われるようになったものです。

この後は西の虚子忌と申さばや  星野立子

1962年の法要の際、虚子の娘に当たる立子(作者の母)がこの句を詠んだために「西の虚子忌」と呼ばれるようになったとのこと。忌日の4月8日は虚子忌、椿寿忌として歳時記に載っていますが、分骨の日まで記念されるとはさすがに大虚子ならではのエピソードです。

さて掲句。会いたくて来たのに会えず、とは誰のことでしょうか。素直に読めば「虚子に」。亡き人に会えないとわかっていても、やはり来てしまう。虚子はそんな魅力を持った人だったのでしょう。家族が詠む忌日の句には、血の繋がった者でなければ表現できない世界があります。その人が虚子であれば尚更。しみじみとした祖父への思いが伝わってくる一句です。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

 

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(秋)






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