石投げて池に氷や白く撥ね 上田信治「リボン」 この句は「石投げて池に氷や」という前半と「白く撥ね」という後半に分かれています。間をつなぐのが切字の「や」。丹念に読んでゆくと構成の面白さに気づきます。 まず「石投げて」で遊びの様子を描写します。石が水面を跳ねてゆく水切りです。と思ったら池に氷が張っていたよ、と軽い驚き...
俳句の作り方
俳句の作り方の記事一覧
クリスマスソング捨て傘束ねられ 高柳克弘「寒林(2016)ふらんす堂」 見たことがあります、この句と同じ光景。渋谷のイブの夜でした。街に聖歌が流れる中、ビニールの傘の束が捨てられていました。罪もないのに縛められて。清らかな天上世界とゴミの溢れる地上。対照が鮮やかな一句です。クリスマス、捨て傘、「す」の音が重なって空...
ロックスター金・銀・豹と着ぶくれて 成田一子「トマトの花(2021)朔出版」 着ぶくれは冬の季語。歳時記によれば「何枚も重ね着したり、分厚いものを着たりして体が膨れて見えること」です。若いうちは薄着で飛び回っていたのに、ある年齢に達すると急に寒さがこたえるようになる。ロッカーも例外ではないのでしょう。恐らく往年の大ス...
どこまでが被曝地どこまでも枯野 赤間学「白露(2021)朔出版」 枯野といえば「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 芭蕉」。 草の枯れ果てた野ではありますが、そこはかつて夢を追った場所でもあるのでしょう。果たせなかった夢が今も棲み、駆け廻っていると言うのです。ですから寂しいだけの場所ではなく「夕日を浴びて輝くさまは侘しいな...
ひあたりの枯れて車をあやつる手 鴇田智哉「天の川銀河発電所(2017)左右社」 アンソロジー句集からの一句。季語は「枯る」。「冬が深まり木や草が枯れはて、野山が枯一色となった蕭条たる景。一本の木や草についてもいう」と歳時記に記されています。 この句には「見せない」というテクニックが用いられています。描かれているのは「...
返り花川は巌の段に急 岡田一実「光聴(2021)素粒社」 帰り花は冬の季語。「小春日和に誘われて春の花が季節外れの花をつけること。本来は桜だが、山吹,つつじなどの場合もいう」と歳時記に記されています。掲句は、山間を流れる急流でしょうか。岩が段をなして、小さな滝を作っています。その上に枝を伸ばして花をつける桜。はら...
おしくらまんじゅう手の甲にパスワード 北山順「ふとノイズ(2021)現代俳句協会」 おしくらまんじゅうは、お互いに押し合い体を暖かくする冬の遊び。「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」と囃しあいます。載っていない歳時記もありますが、ここでは冬の季語として用いられています。子どもの頃を回想した句かと思ったら、パスワード...
蠟製のパスタ立ち昇りフォーク宙に凍つ 関悦史「六十億本の回転する曲がつた棒(2011)邑書林」 食堂の店先で見かけるアレを詠んだ句です。フォークがナポリタン・スパゲッティを巻き取って宙に浮かんでいる。手を触れていないのにフォークが浮かんでいるのが不思議で、子どもの頃見入ったものでした。実は皿の上にワイヤーでフォークを...
ひとしきり猫の嗅ぎたる青写真 櫂未知子「カムイ(2017)ふらんす堂」 青写真は昔の子どもの冬の遊び。日光写真とも言います。漫画などを白黒で印刷したネガフィルムに印画紙を重ね、日光に当てます。しばらくして水洗いすると映像が浮かび上がります。感光している間は、動かせません。図柄がずれてしまいますから。猫たちも、なんだか...
柚子坊のたつぷり食べてよきみどり 片山由美子「飛英(2019)角川書店」 アゲハ蝶は柚子などの柑橘に卵を産みます。その幼虫の芋虫は柚子坊と呼ばれ、柑橘の葉を食べて成長します。確か作者がフェイスブックに自宅の鉢植えでふ化した柚子坊のことを書いていらっしゃったように思うのですが、ですからこの句は身近な観察の句ということ...
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