どこまでが被曝地どこまでも枯野 赤間学「白露(2021)朔出版」
枯野といえば「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 芭蕉」。
草の枯れ果てた野ではありますが、そこはかつて夢を追った場所でもあるのでしょう。果たせなかった夢が今も棲み、駆け廻っていると言うのです。ですから寂しいだけの場所ではなく「夕日を浴びて輝くさまは侘しいなかにも華やぎを感じさせる」と歳時記は解説しています。
作者は福島で東日本大震災の復興再生事業に携わる方。大震災から十年が経ち、未だ復興半ばの現状に忸怩たるものがある、と後書きに記していらっしゃいます。「どこまでが」と果てしない被曝地の広がりを見せ、「どこまでも」と対句のように畳みかけながら、更に広い枯野を描くという構成が見事な一句。かつてそこが、夢を追った場所であったと知れば一層、思いの深さに胸を打たれます。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(冬)