「ビヤホール(夏)」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




さまよへる湖に似てビヤホール   櫂未知子「カムイ(2017)ふらんす堂」

「さまよえる湖」はスウェーデンの探検家スヴェン・ヘディンの著書の題名。ヘディンは中央アジア、タリム盆地東端の湖ロプ・ノールがタリム川の流路の変化によって移動するという説を唱え、1934年現地の調査を行いました。著書はその記録。シルクロード紀行文学の傑作と言われています。作者は、おそらくその本に魅せられ、この句を詠んだのでしょう。ビヤホールの例えとしては大層ユニーク。夏が近づくとある場所に突然現れ、秋が近づくと消えてしまうビヤホールですから、さまよえるという形容も納得がいきます。湖とビヤホール。渇きをいやすという点でも共通しています。

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(夏)

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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