水かぶるやうにサンドレスをかぶる 西山ゆりこ「ゴールデンウイーク(2017)朔出版」
サンドレスは着るのではなく、かぶるものと知りました。私には身につける機会がなく、もっぱら見るだけ。着る人だけにわかる実感の句です。サンドレスとは「夏の日差しを思い切り楽しみ、健康的な小麦色の肌に日焼けするために、肩や襟ぐり、背中を大きくあけた女性用の洋服のこと」と大歳時記に。素肌につけるものですから、「かぶる」と言う動詞が生きているのだと思いました。水をかぶれば身が引き締まります。祈りの場面や何かの行動を起こすとき。大事な場所へ向かうとき。ちょっと日常を離れた場面を思い浮かべます。そうだとすれば、サンドレスをかぶるときも、小さな決意を秘めているのでしょう。サンドレスは夏の日差しを楽しむためのものですが、それだけではない。いわゆる勝負服のような役割があるのかもしれません。これから出かける場所は海?避暑地?それともデート?サンドレスの持つもう一つの意味を、この句から教えてもらいました。
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(夏)
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」