しろひがさ「白日傘(夏)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




恐竜行きバスに駆込む白日傘  佐怒賀正美「無二(2018)ふらんす堂」

恐竜展行きではなく、恐竜行き。ちょっとしたレトリックが楽しく、わくわくします。恐竜から連想するのは、大きな化石の骨格。一方白日傘の方は小さくて沢山の骨があります。大小の骨の対比が鮮やかです。

俳句の鑑賞にはルールがあって、書かれたもの以外の想像は避けなければなりません。しかしキゴサーチでは、少々脱線しても構わないことにしています。学校の授業でも、先生が授業と関係のないことを話した時間が一番楽しかったもの。脱線する歳時記は俳句の勉強には役立ちませんが、もしかしたら読者の記憶に残るかもしれません。

例えばこの句の先を想像してみます。バスの終点には恐竜が待っていて、大きな口を開けてバスを飲み込んでしまいます。飲み込まれたのは白日傘の少女と、丸眼鏡の少年と猫型ロボットです。絶体絶命!と思いきや、好きなところに行けるドアを取り出して、さっさと脱出してしまいます。

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(夏)

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






おすすめの記事