- 雪消えて麦一寸の野づらかな
- 川越て鳥の見てゐる焼野かな
- 底のなき柄杓流れて春の水
- 打ちかへす土黒みふく春田哉
- 引鶴の声はるかなる朝日哉
- 顔かくす雉に日のさす野中かな
- 夕川や鱒にうたれし獺の声
- 鞘赤き長刀行や春の野辺
- 鳥の巣やまだ一寸の草隠れ
- 山ぶきや花ふくみ行魚もあり
- 海棠や戸ざせし儘の玉簾
- 摘み摘みて人あらはなる茶園かな
- 蛙啼く田の水うごく月夜かな
- 今出し地虫哀れめ道の中
- 川嶋や夏かれ草に鳥の糞
- 高からぬ花となりゆく卯月かな
- 四辻や匂ひ吹みつあやめの日
- 髭つらに葵かけたる祭かな
- 二三本芥子作りけり弱法師
- 神子村や椿の下の紅の花
- 筆とめて打払ひけり火取虫
- 川狩や魚串立てる石の間
- 蝙蝠の轅に落つる嵯峨野かな
- 日盛りや半ば曲りて種胡瓜
- 忍ぶ釣軒に寄添ふ女かな
- 夏の日や広葉柏に移りそめ
- 古寺や葎の下の狐穴
- 御柱や薙刀持ちの顔の汗
- みな月の限りを風の吹夜哉
- やゝ有て又のぼりけり五月雲
- 爺婆の昼間遊びや麻地酒
- 筆留て打払ひけり火取虫
- 折々や藻になく虫の声沈む
- 荻の声舟は人なき夕かな
- 御射山や昨日は芒今日は里
- 枯蘆の日に/\折て流れけり
- 更行や机の下の桐火桶
- 元日や松静なる東山
- 正月や皮足袋白き鍛冶の弟子
高桑蘭更 プロフィール
高桑 闌更(たかくわ らんこう、享保11年(1726年)- 寛政10年5月3日(1798年6月16日))