かっこう「郭公(夏)動物」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




郭公の一オクターブ上が空  蜂谷一人「青でなくブルー(2016)」

ある時、こんな短歌を見つけました。「どこまでが空かと思い 結局は 地上スレスレまで空である  奥村晃作」なるほどと感心したものの、何か引っかかるものがありました。場所によって空の始まる場所は違うのではないかと思ったのです。例えば都会であればビルの上。マンションの屋上で洗濯物が干してあれば、さらにその上。海であればマストの上。田んぼであれば稲の上。森であれば梢の上。いえ、梢よりもさらに高いところへ突き抜けてゆくものがありました。郭公の声です。遠くからも聞こえる甲高い声は、夏の森を代表する音だと思いました。それで生まれたのが掲句なのです。

郭公という名前は、囀りを文字にしたもの。学名をククルス・カノルスと言いますが、ククルスはあの鳴き声。日本語ではカッコー、ラテン語ではククルスという訳です。カノルスの方は「音楽的な」という意味。学名まで鳴き声に由来しているのは、声があまりに特徴的だからでしょう。ヨーロッパでは少女たちが、その年最初に聞いた鳴き声の数で占いをするのだとか。自分が何年後に結婚するのかを。郭公は、未来を告げる予言の鳥なのです。

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(夏)

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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