がんじつ「元日(新年)」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

元日や常のごとくに人を焼き  片山由美子「飛英(2019)角川書店」

「インド十句」と前書きのある一句。あとがきに次のように記されています。「インドでは、ガンジス川で沐浴する人々の近くで荼毘の煙が上がっている。それが日常であるが、その川に舟を浮かべ、初日の出を待った。私のなかでは漠然と、死は生の終りにあるものだったが、チベットやインドの人々の死生観に触れ、生や命ということをあらためて考えるようになった」と。

海外詠は難しいと言われますが、それは季語が嵌まらないから。日本の花が、海外でも見られるとは限りませんし、風俗も異なります。さらに季節への思いも違う。例えば英国で夏草といえば、日本の春のような山野に咲き乱れる野草のこと。日本の夏草のような暑苦しさがありません。しかし、時候の季語であれば万国共通。時差はありますが、日本の元日もインドの元日も同じ一日を指す言葉です。西暦を用いることで、各国の暦が統一されているからです。ですから海外詠に時候の季語を用いることは、理にかなった選択のように思われます。むしろ、季語の本意との落差が一句の眼目となることもあるでしょう。掲句は日本の正月とは全く違う風景を描いていますが、聖なる一日であることに変わりありません。メメント・モリ(死を忘れるな)というラテン語の箴言を思い出します。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html



おすすめの記事