
初御空みづのあふみの揺るぎなし 明隅礼子「超新撰21(2010)邑書林」
初御空は元旦の空。「次第に明け行く空はいかにも清新な気が満ちる」と歳時記に記されています。みそら、みづ、あふみ、と「み」の音が三回繰り返される掲句。調べを美しく整えています。それだけではなく優れて映像的でもあります。
まず、初御空で、元日の空が映し出されます。澄み切った風の渡る空です。続いて中七で琵琶湖が登場します。空と向かい合う大きな水です。そして下五。湖の形容として「揺るぎなし」は異例でしょう。湖でありながら大地のような広がりと重厚感が感じられます。
いま私は「大地のような」と書きました。つまり上五の風、中七の水、下五の土と世界を構成する三つの要素が一句の中に暗示されているのです。輝く湖を描くことで、新年を迎えて生まれ変わった世界の姿を示す掲句。見事な象徴性と言わなければなりません。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(新年)