アート【超初心者向け俳句百科ハイクロペディア/蜂谷一人】

俳句は言葉のアートです。しかし同時に句会で点を競い合うゲームでもあります。アートとしての俳句には、こうすべきというルールがありません。むしろルールを破ること、ときにはルールを変更することが重要になります。絵画の世界では画家たちが輪郭を描くのを辞めたときに印象派が誕生しました。彼らは従来の「絵とはかたちを描くもの」というルールを破り、光を描くという新しい世界を生み出したのです。不断にルールを破ってゆく、それがアートの本質です。さて名句として知られる次の作品もルールを破っています。

古池や蛙飛び込む水の音 芭蕉

この句のどこが名句なのか、悩んだ経験はありませんか。かくいう私もその一人。俳句仲間の椋さんに聞くまでは????でした。彼によると「芭蕉がこの句を詠んだのは江戸前期。今から350年も前のこと。それ以前の詩歌の世界では蛙といえば河鹿蛙。渓流に棲む鳴き声の美しい蛙です。和歌では鳴き声を詠むのが常でした。ところが芭蕉が詠んだのは普通の蛙。姿がいいわけではなく、鳴いてさえおらず、その上 水に飛び込むなんて当時としてはまさに掟破りだったのです」とのこと。

しかし、一方で俳句はアートではなく言葉のゲームであると捉えることも充分可能です。ゲームであれば逆にルールを守ることが重要。季語を一つだけ用い、リズムは五七五に。切字と呼ばれる「や」「かな」「けり」を使いこなします。ルールを熟知してプレイすることが勝利に結びつきます。そこであなたへの質問です。あなたは俳句でアートを目指しますか?それともゲームの達人を目指しますか?

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

おすすめの記事