西瓜はいつの季語でしょう。夏?不正解。正しくは秋。では西瓜割りは?もちろん秋でしょう。不正解。正しくは夏。西瓜は植物の季語。一方西瓜割りは生活の季語。分類が違います。歳時記は、時候 天文 地理 生活 行事 動物 植物の7つの項目に分類されています。
時候とは、手紙の書きだしの挨拶に使う言葉。「大暑の候いかがお過ごしですか」とか「めっきり涼しくなってまいりました」などなど。「大暑」や「涼し」が時候の季語です。
天文は空を見上げてください。「夏の月」「夏の星」「炎天」。
地理は大地に横たわっているもの。「夏野」「青田」「夏の川」も。水であっても地面にあるものは地理なんですね。
生活はひとの暮らしに関わるもの。たとえば道具や料理の名前です。「ハンモック」や茄子の「しぎ焼き」。茄子だけなら植物の分類ですが料理されると生活に。人の手が加わると分類が変わるんですね。さらに分類が変わると、西瓜のように季節まで変わってしまうことがあるので要注意。
行事は「こどもの日」とか「愛鳥週間」「朝顔市」。これはわかりやすいですね。太宰治の命日「桜桃忌」のように、忌日も行事に入ります。
動物には獣はもちろん虫や魚も含まれます。「守宮」、読めますか?「やもり」と読みます。「翡翠」はかわせみ。コバルト色の小鳥です。「螻蛄」は、けら。難読季語の宝庫です。
植物は「さくらんぼ」や「バナナ」のような果実。野菜。花の名前。「木下闇(こしたやみ)」は木の下の暗がりのこと。闇なのに植物に分類されています。
このように分類はかなりご都合主義的。理不尽といえば理不尽ですが、英文法の例外のように覚えるしかありません。ローマ帝国の哲人皇帝マルクス・アウレリウスはこんな意味のことを言っています。「ものごとに腹を立てても仕方ない。ものごとのほうは我々の感情など知ったことではないのだから」間違えない方法はたった一つ。その都度 歳時記で確認することです。
風呂敷のうすくて西瓜まんまるし 右城暮石
西瓜割る東京湾に星上げて 一人