牡蠣殻の残る晩餐最中なり 中原道夫「一夜劇(2016)フランス堂
パリ同時多発テロとは、二〇一五年十一月十三日にパリ市街と郊外のサン・ドニ地区の商業施設でイスラム国の先頭員と見られる複数のグループによる銃撃、および爆発により死者一三〇名、負傷者三百名以上を生んだテロ事件のこと。カフェ、ピザ屋、カンボジア料理店、レストラン、劇場など人々が憩いや楽しみを求めて集う場所が狙われました。掲句の通り、レストランでは晩餐の最中に襲われた方もいたと報じられています。冬のパリといえば、牡蠣料理が名物の一つ。ドーバー海峡で穫れた牡蠣は味のよいことで有名。楽しいはずの晩餐が悲劇に変わった瞬間を、俳句が記録しました。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」