かれあし「枯蘆(冬)植物」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




枯蘆やだまし絵めきて鳥の数 岩田由美「雲なつかし(2017)ふらんす堂」

水辺に蘆が枯れています。向こうから日がさしていれば、蘆のシルエット。黒い筋が垂直に幾重にも重なります。蘆の奥には湖があって水鳥たちが泳いでいます。水平に動くのが鳥たちの影。垂直の影と水平に移動する影が重なって、複雑な模様を作り出します。それが作者には絵のように見えたのです。そう、エッシャーのようなだまし絵です。白黒の魚の形が、少しずつ変化して鳥になる。そんな絵を見たことはありませんか。それがエッシャー。鳥の数と言ったことで、沢山の鳥を想像します。広い蘆原を多数の水鳥が次々に横切ってゆきます。幾何学のような日と影のパターンが交錯し、リズムが生まれます。やがて午後の日がゆっくりと傾くにつれ、影は長くなり膨らんで、だまし絵を墨一色に変えてしまうのです。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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