浮き寝して仲間に入れて貰ひけり 西村麒麟「鴨(2017)文學の森」
浮き寝鳥とは、水に浮いたまま眠っている鳥の総称。鴨、かいつぶり、ゆりかもめ、おしどりなどがそれにあたります。浮き寝の仲間にいれてもらうというのですから、作者自身が鳥になっているのでしょう。鳥を見て詠んだ句ではなく、鳥になって詠んだ句。対象になりきるのは案外難しいもの。作者はらくらくと人の世界と生き物たちの世界を行き来できる才能を持っているようです。浮き寝するのは、天敵に襲われるのを防ぐためですが公園などで見かける浮き寝鳥は、自由で気ままに暮らしているように見えます。会社勤めの私などから見れば、羨ましいかぎり。鳥になってしまえる麒麟さんは妬ましくもあります。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」