空渡れよと破魔弓を授かりぬ 恩田侑布子「夢洗ひ(2016)角川書店」
弓矢は神話によく登場します。例えばインド神話の「サルンガ」。太陽神の持つ弓矢で矢には翼があり、その先端は光と炎で出来ています。北欧神話の「ミストルテイン」オーディンの息子の命を奪ったヤドリギの矢です。日本神話の「天乃麻迦古弓(あまのまかこゆみ)」は、神より賜った弓矢で雉の鳴女(きじのなきめ)を射抜き、そのまま高天原まで届いたと言われます。
何気なく正月に神社でいただく破魔弓。掲句はその破魔弓をもって空を渡れというのです。もともと弓が呪力を持つと存在であることを思い出させる一句。英雄伝説の一場面のような勇壮さと神々しさ。こんな壮大な破魔弓の句には滅多にお目にかかれません。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」