はつゆ「初湯(新年)」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

女湯に天井つづく初湯かな  小川軽舟「朝晩(2019)ふらんす堂

銭湯でしょうかホテルの大浴場でしょうか。男湯と女湯はこの句のように天井がつながっています。ですから声が筒抜け。その上、風呂は声が響きます。カラオケのない昔は歌を練習する場所と言えば風呂でした。筒抜けで声が響くのですから、やろうと思えば男湯と女湯で会話もできます。「おーい、石鹸」なんて女湯に向かって叫ぶと、仕切りを越えて石鹸が落ちてくるという光景を目撃したこともありました。こう書いているだけで、鼻先に湯と石鹸の匂いが漂ってきます。初湯とは、新年に初めて風呂を立てて入ること。(角川歳時記第四版)かつては銭湯では二日が初湯で、江戸時代には祝儀を包んで番台に置く習慣があった、とか。女湯の声が聞こえる初湯とは、なんて贅沢でめでたいのでしょうか。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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