朝寒やフレーク浸る乳の色 高柳克弘「寒林(2016)ふらんす堂」
朝寒は晩秋の季語。「晩秋になると朝は著しく気温が下がり、手足の冷たさを覚える。いよいよ冬の近いことが感じられる」と歳時記に。冷え冷えとした晩秋の朝に、コーンフレークを食べている作者。肌寒いのに、食べ物まで冷たい。一層身にしむように感じられます。
この乳はもちろん牛乳。わずかに青みがかった白でなければなりません。豆乳だったら?少し黄色がかっている分、多少暖かく感じられるでしょう。
シリアルという言葉の代わりに、フレークと言っているのもポイント。フレーク、浸すとHの音が続いてふやけた感じが高まります。また「浸す(他動詞)」であれば作者が自身であつらえているのでしょうが、「浸る(自動詞)」ですから、たとえば妻が作ったものが目の前にある感じ。もう寒いのだから、もうちょっと温かいものにして欲しかった。いえ、決して口には出しませんが 心の片隅にある呟きが聞こえてきそうではありませんか。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(秋)