見えてゐて京都が遠し絵双六 西村麒麟「鴨(2017)文學の森」
句集「鴨」の巻頭を飾る句です。今回キゴサーチを執筆するにあたり、沢山の句集を読みました。気づいたことは新年の句で始まる句集は少ないということ。季節順に並べるのなら新年から始まりそうなものですが、少ないということは、ずばり難しいから避けているのか?
自分自身を振り返ってみると、新年の句は作りにくい。数も少なく出来もよくない。そこで巻頭にはもって来られない。そういう流れになっています。しかし麒麟さんは新年から句集を始めました。それだけでも大胆。かつ、なみなみならぬ自信を感じます。この句の季語は絵双六。昔の双六はお江戸日本橋から出発し、上がりが京都でした。「見えてゐて京都が遠し」とはよく言ったもの。しかしそれだけではありません。京都イコール終着点と考えれば、もっと象徴的に読むことも出来ます。つまり俳人としての目標です。まだ若く人生という双六の始めの方にいる麒麟さん。その彼が見据えるゴールには何が待っているのでしょうか。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」