- かりがねや並べば低き母の肩
- ねむられぬ友の扇子の音すなり
- 八方に夏のあをぞら悔も若し
- 夏蜜柑むくや稿つぐ爪たてゝ
- 外は満月ひたむきな語がふと躓く
- 夜を昼へ木立かぶさる虫時雨
- 学童のこゑ湧く丘や芽ぶきそむ
- 寒月にひしめく石を何故去らぬ
- 春潮のふくらみ来たり巌うつ
- 林中に今宵灯明くメ−デー歌
- 梅に佇つ尚も腕組みほどかずに
- 秋風やかかと大きく戦後の主婦
- 落椿涙たのしむ時代よ去れ
- 豪雨つのる一樹にありて蟬澄めり
- むつまじき吾が老父母にパンジーなど
- 高窓や紅粛々と夏至の暁け
- 鹽味のはつたい新刊の書を膝に
赤城さかえ プロフィール
赤城 さかえ(あかぎ さかえ、男性、1908年(明治41年)6月3日 - 1967年(昭和42年)5月16日)