- 倉のひまより見ゆ春の山夕月が
- 淋しき花があれば蝶蝶は寄りて行きけり
- 風ひそひそ柿の葉落としゆく月夜
- 小さき火に炭起し話し暮れてをり
- いち早く枯れる草なれば実を結ぶ
- 淋しき花があれば蝶蝶は寄りて行きけり
- 風ひそひそ柿の葉落としゆく月夜
- 小さき火に炭起し話し暮れてをり
- いち早く枯れる草なれば実を結ぶ
- するする陽がしずむ海のかなたの國へ
- 繚乱の花のはるひをふらせる
- かがやきのきはみしら波うち返し
- 早う日かげる家なればつくつくほうし
- しくしくと蝉鳴き暮の雨光る
- かまどの火に寄れば幼き日に燃ゆる
- 舟をのぼれば島人の墓が見えわたり
- いつまで枯れてある草なるぞ火を焚くよ
- あかつきかけて雪消す雨のそそぎ居り
- 人の前にて伸べし手のかばかりに汚れ
- いと高き木が一つさやぎやまぬかな
- ふうりんにさびしいかぜながれゆく
- 若葉冷えゆく星の光なり
- 風を青み野をはろばろと林あり
- かそけき月のかげつくりゆく蟲の音よ
- わが淋しき日にそだちゆく秋芽かな
- よさめよさめ餘所の町の灯に仰ぐ
野村朱鱗洞 プロフィール
野村 朱鱗洞(のむら しゅりんどう、1893年(明治26年)11月26日 - 1918年(大正7年)10月31日)