せいや「聖夜(冬)行事」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




とぐろ巻く血の腸詰(ブーダン・ノワール)聖夜待つ  中原道夫「一夜劇(2016)フランス堂」

二〇一五年のパリ同時多発テロを記録した句の一つ。その時、劇場ではイーグルス・オブ・デス・メタルのコンサートが行われていました。三人組の犯人は観客に向けて銃を乱射した後、観客を人質にして立てこもります。翌日未明に特殊部隊が突入し犯人の一人を射殺。残った二人は自爆。観客八十九名が死亡という大惨事となりました。ブーダン・ノワールとは豚の血液を材料としたソーセージのこと。黒い色をしており、独特の臭気がありますが、それを珍味として好む方も多い食材です。一般的には焼き林檎などの甘い付け合わせと共に供せられます。さて、蛇を思わせるとぐろ、血という生々しい言葉を用いた掲句。聖夜という清らかな言葉との取り合わせにはっとさせられます。テロの現場の映像として鑑賞すればなおさら、忘れがたい読後感を残します。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

 

最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(冬)






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