鶺鴒がとぶぱつと白ぱつと白 村上鞆彦「遅日の岸(2015)ふらんす堂」
鶺鴒は長い尾を持ち、尾を上下に振って石や地面を叩くように見えるところから「石たたき」とも呼ばれる鳥。いくつかの種類に分かれますが、よく見るのはハクセキレイとセグロセキレイ。どちらも黒白のコントラストがはっきりとしていて、頬が白い方がハクセキレイ、黒い方がセグロセキレイです。飛び方の特徴をよく捉えた掲句。はばたいて浮く、羽を閉じて少し落ちる、またはばたいて浮く、それを繰り返して波打つように飛ぶ鶺鴒。翼の上面は黒ですが、付け根が白いので羽ばたくたびに「パッと白、パッと白」となります。望遠レンズのスローモーションが目に浮かびます。ある句ではワイドレンズ「投げ出して足遠くある暮春かな」またある句ではマクロレンズ(接写レンズ)「たんぽぽの絮をこはさず雨のふる」この句では望遠レンズという風に、交換レンズを何本も持っていて被写体によって使い分ける作者。優れたカメラマンのような視線を感じます。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(秋)