白き指灯に咲かせゆく踊りかな 長嶺千晶「雁の雫(2015)文學の森」
踊りは盆踊りのこと。「本来先祖のためのものだったが娯楽になり、浴衣がけの男女が音頭にあわせて夜の更けるのも忘れて踊るようになった」と歳時記には記されています。通年行われる舞踊やダンスはここに入らないので注意が必要。
掲句は夜の踊りのシーン。女性たちの白い指が照明に映えて花のように見えます。「咲かせ」という動詞が華やかさを描写します。しかし、照明が届かない部分は夜。光と闇が隣り合わせとなっているのです。光は生者たちの住むところ。闇は死者たちの世界です。この世に戻ってきた死者たちは、踊りの輪の中で生者と触れ合い、魂を慰められます。踊り子たちの花のような指先は、死者たちへの供華。やがて光から闇に消えてゆく花たちは、生の儚さを見る人に思い出させます。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(秋)