行きつけのラーメン屋さんには具の違いによって色々なメニューがあります。チャーシュー、ネギ、味付け卵、もやし、ほうれん草。付け加えるごとに値段が上がってゆき、全部盛りにすると千五百円にもなります。見た目は豪華ですが、私はあまり好きではありません。具が邪魔しあってスープの味を損なうように感じられてしまいます。
俳句の世界でも、この全部盛りのような句をしばしば見かけます。一言で言えば詰め込みすぎ。句の焦点がぼやけ、何がメインなのか分からなくなってしまいます。反対に見どころのない句もあります。それはそれでつまらないもの。かけラーメンのように少々寂しい。
岸本尚毅さんは「一句の中で面白いとところは一か所に」とおっしゃっています。ラーメンでいえばチャーシュー麺。味玉ラーメン。辛ねぎラーメン。どれも一点豪華で美味しそう!ついでに言えば、一句に季語はひとつ。切字もひとつ。俳句は全部盛りではなく、一点豪華主義で。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」