ああ・嗚呼(序文に代えて)【超初心者向け俳句百科ハイクロペディア/蜂谷一人】

私は俳句番組のプロデューサーとして俳句の現場に関わってきました。俳人の先生方と交わり、数多くの意見に触れてきました。こうした経験を通して俳人ごとに見解が違うことや、あえて説明しないことが多々あると気づきました。暗黙のコミュニケーションを重視する日本の伝統なのかもしれません。

ところでテレビは全てを明示しなければならないメディア。暗示しても視聴者に伝わりません。これまであまり語られてこなかった俳句の機微をどう明示すればいいのか。悩んで「鳴呼」と嘆息することもしばしばでした。その中である種の「翻訳機能(暗示→明示)」を脳の中に備えるようになってきました。

世の中には多くの俳句入門書があり、懇切丁寧に「わからないこと」を説明してくれます。ところが初心者の方に尋ねてみると「何がわからないのか、わからない」というのです。千人の初心者がいれば、わからないことも千通り。それぞれに段階を踏んで教えてゆくことはほぼ不可能ではないでしょうか。

そこで、ハイクロペディアでは「わからないことを初心者に見つけてもらう」ことにしました。

だから、辞典形式。俳句の百科事典、つまりエンサイクロペディアです。項目ごとに拾い読みしていただいても結構ですし、初めから順に読んでもらってもOK。辞典ですから、どこかの項目にあなたのわからないことが掲載されている筈です。

しかも、俳句には様々な考え方や例外があり、わかりやすく言おうとすると「厳密に言えばそうともいえない」「別の考え方もある」とか、必ず突込みが入ります。そのため従来の入門書ではわざとぼかした表現がとられることもありました。

しかし、この稿でははっきり言います。少々乱暴かもしれませんが、予備校の参考書みたいなものと考えてください。大学の国文科で学ぶような精緻さは一旦忘れ、思い切って簡略化しています。深遠な世界のほんの入口にしか過ぎませんが、とりあえず試験に出そうなところだけを、60点くらい取れる内容となっています。

ハイクロペディアに並ぶ項目は、私自身が「鳴呼」と嘆息してきたことばかり。出来る限り「暗示→明示」していますので、今から俳句を始めるあなたにきっと役立つ筈です。このささやかな稿が俳句の迷路に迷ってしまいそうなあなたの羅針盤とならんことを。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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