うなみ「卯波(夏)地理」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




返す波引き込みながら卯波かな   岩田由美「雲なつかし(2017)ふらんす堂」

卯波は旧歴四月にたつ波のこと。天候が不安定で白波がたちやすい時期です。波の白さを卯の花の白さに例えたのが卯波。さてあなたは、靴を脱いで砂浜に立っています。波打ち際に進むと、思ったよりも冷たい水の感触に驚きます。波が寄せては去ってゆきます。来る波が足を濡らし、去る波が足元の砂を削ってゆきます。足元がさらわれてゆく少し不安な感じ。沖に目をやると白い波がしらが海を埋め尽くしています。突然、自分がたった一人で海に対峙しているような心細さを感じます。目を閉じると波音に砂の音が交じっているのに気づきます。掲句、引き込みながらが写生。卯波の強さをよく捉えています。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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