数字を詠みこんだ句は沢山あります。
香水の一滴づつにかくも減る 山口波津女
さみだれや大河を前に家二軒 与謝蕪村
いきいきと三月生まる雲の中 飯田龍太
みづうみに四五枚洗ふ障子かな 大峯あきら
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 森澄雄
数字を入れると描写が具体的になります。これは俳句にとってとてもよいこと。面白いことに一、三、五、七など奇数は詠まれることが多いのに対して、二、四、六などの偶数は頻度が下がるように感じられます。陰陽でいえば奇数は陽で、偶数は陰。日本人の陽を喜ぶ気持ちが表れているのかも知れません。ということは、偶数を詠めば競争相手が少ないはず。特に四、六あたりはねらい目です。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」