はるのつち「春の土(春)地理」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




倒立の手に湿りけり春の土  蜂谷一人「青でなくブルー(2016)」

春の土は黒く湿っていて、あたたかく感じます。庭で逆立ちを楽しむのは子どもたち。でんぐり返ったり、変な転び方をしても怪我ひとつ負いません。今、私が試みたら多分打ち身捻挫肩こり腰痛。まかり間違えば捻挫か骨折。でも子どもたちは、小さなてのひらに黒い土をつけて何度も逆立ちを繰り返します。大人が飽きて「もうやめようよ」と言ってもききません。その生命力は春の土に共通するもの。まもなく、その土からは植物が芽吹くことでしょう。未来を感じさせる春の土と小さなてのひらです。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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