大勢で、あるいは気のあった仲間と外に出かけ俳句をつくること。これを吟行といいます。あなたの俳句力をあげるよい機会ですので、誘われたら是非参加してみてください。小さな旅の中で俳句を詠むわけですから、材料は沢山あります。花を見ても、鳥を見ても新鮮な気持ちで俳句が詠めるはずです。ところが風光明媚なところで、見たままを俳句に詠んでいると絵葉書のような句が出来上がります。言っておきますが「絵葉書のような」は褒め言葉ではありません。句会では綺麗だけれど特色のない句を「絵葉書のような」と形容します。
さて、こつをひとつお教えしましょう。吟行の際には大きな季語をひとつ決めておきます。春雨、夏空、秋日、北風などの形をもたない季語です。現場についたら、そこにある具体的な物を探します。同行の友人がつけているピアス、時計、転がっている空き缶、瓶、など何でも結構ですが、小さなもののほうがベター。大きな季語に小さなものを取り合わせるとバランスがよくなります。大切なのは季語以外のモノを選ぶこと。これで準備はすべてオーケー。
秋日濃しビニル囲ひの立呑屋 一人
こんな感じです。秋日という形を持たない季語と立呑屋という具体物の対比による取り合わせが出来上がりました。ビニル囲ひとしたのは、秋日のきらきらした光をはっきりと見せるため。このあたりがちょっとした工夫です。この場合は明るい季語に対して明るいものを取り合わせていますが、逆に暗いものを持ってくることもできます。
秋日濃し吊るもののなき壁の釘 一人
明暗、大小、長短など正反対のものの取り合わせはいつでも有効です。基本テクニックですので是非覚えておいてください。
さて短い時間で作るのは自信がないと、事前に句を準備する方がいらっしゃいます。しかし、晴れの句を作って臨んだら途中から雨が降り出したとか、とかく天気はままなりませんし、行ってみたらこんな筈じゃなかったと、なかなか予想通りにはいきません。結局、その場で作った句が一番パワーがあるようです。