俳句は自分探しに似ています。本当の自分を探しに旅に出ても、なかなか自分は見つかりません。どこかに本当の自分がいると考えるのは幻想。本当の自分とは、日々の生活や仕事を通じて周囲の人に評価され、作り上げられてゆくものです。人は他人との関係の中で成長します。俳句も同じ。よく「俳句がうまくなったら句会に出ます」という人がいますが、句会で出会ったためしがありません。句会は目的ではなく手段。句会で他人の評価をきくからこそ、俳人として成長できるのです。とはいえ、無点で帰りの電車に乗るのはつらいもの。はからずも途中下車してバーに寄ることになります。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」