- 老たのしいつまでかんで田螺和
- 真下は六浦の海や花しどみ
- あちこちと子の行くまゝに木瓜の花
- 明けはなす障子に虻の流れ入る
- 松蝉の早鳴いてゐる別墅かな
- ひざの上に常磐木落葉してありぬ
- 草庵の垣根草なり夏蕨
- 川下に流れ来にけりえごの花
- げぢげぢの足をこぼして逃げにけり
- ががんぼのかなしかなしと夜の障子
- 物がみな飛んでしまひし青嵐
- 孔雀草なげかけてあるたすきかな
- 革布団なでゝ座りし埃かな
- 故郷は油団に暗し客主
- 水盤をめぐりて猫の水鏡
- 馬追の声ばかりなり天の川
- 若布食ふ烏賊も上れり鰯網
- 蘆垣を結ひまはしたる住居かな
- 屠蘇つげよ菊の御紋のうかむまで
- 鶯のしきりに鳴いて風呂ぬるし
本田あふひ プロフィール
本田 あふひ(ほんだ あおい、1875年(明治8年)12月17日 - 1939年(昭和14年)4月2日)