ラグビーの主に尻見てゐる感じ 太田うさぎ「また明日(2020)左右社」 ラグビーは冬の季語。「フットボールの一種で、サッカー同様、イギリスが発祥の地。秋から冬にかけて盛んに行われる」と歳時記に記されています。というより、日本開催のW杯でお馴染みですよね。掲句から感じるのは、ガッチリとしたスクラム。フォワードの選手た...
俳句の作り方
俳句の作り方の記事一覧
愛猫のとぶむささびのやうにとぶ 石田郷子「草の王(2015)ふらんす堂」 むささびはリス科の動物。脚間の皮膜を広げ木から木へ滑空します。実は私、作者に誘われてむささびを見に行ったことがあります。作者が住んでいるのは埼玉県飯能市。ご近所の神社の木のうろに、むささびが住んでいると言うのです。電車とバスを乗り継ぎ、川沿いの...
襤褸市の指輪の箱の脱脂綿 茅根知子「赤い金魚(2021)本阿弥書店」 季語は襤褸市。東京世田谷など各地で行われる古着・古物市のこと。世田谷のものは12月と1月の2回、代官屋敷を中心としたボロ市通りで営まれます。700もの露店が連なる様は壮観。古着はもちろん骨董、陶磁器、用途不明の道具、中には白木の神棚まで販売されます...
絵の少女生者憎める冬館 高柳克弘「寒林(2016)フランス堂」 「冬館というと、冬に備えてしつらえをした大きな洋館が連想される」と歳時記に。なるほど、洋館という訳です。例えば丘の上に立つ古く大きな館。街を見下ろしています。誰が住んでいるのか、街の人に尋ねても答えてくれません。或る夜忍んでいった「私」は、シャンデリア...
ヴェネツィアは亡びを急ぎ冬の靄 小林貴子「黄金分割(2019)朔出版」 ヴェネツィアは沈みゆく街です。原初の時代、ここには大陸からの川の流れに乗ってくる土砂と、アドリア海の波によって作られた湿地帯が広がっていました。北イタリアの都市の住民が、蛮族の侵入から逃れて干潟に街を築いたのは5世紀。地中海貿易で財をなし華麗な...
戻れぬと知りつつ冬の虹くぐる 小島明「天使(2021)ふらんす堂」 作者は詩人。俳号・猫じゃらしの名前で私たちの句会にいらっしゃっていました。一時期離れていましたが、ひょっこり戻ってきてくれたのが2021年5月。膵臓に腫瘍がみつかって、残された時間がどのくらいあるかわからないという時期でした。赤羽根めぐみさんが仲間...
パイプオルガン冬の木立のやうに 浦川聡子「眠れる木(2012)深夜叢書社」 パイプオルガンは一番大きな楽器。立ち並ぶパイプは大きなもので10メートル。小さなものは数センチで、あるホールのものは実に3922本ものパイプを備えているとか。見えているのはごく一部で、その何倍ものパイプが舞台裏に隠されているのです。そんなに沢...
まつすぐに冬来る森田愛子の墓 小林貴子「黄金分割(2019)朔出版」 冬来るは立冬のこと。新暦11月7日頃にあたります。「暦の上ではこの日から冬に入る。厳しい季節を迎える緊張感が感じられる」と歳時記に記されています。森田愛子(1917〜1947)は若くして亡くなった女性俳人。高濱虚子の写生文「虹」のヒロインとして知ら...
冬菊に冬菊を足す別れかな 山田露結「俳コレ(2011)邑書林」 葬送の場面でしょうか。最後の別れの時、参列者が一人ずつ棺に白い菊を入れてゆきます。足すという言葉が秀逸。少しずつ増えてゆく菊が、やがて棺を真っ白に埋め尽くしてゆくのです。冬菊は寒さに耐えて咲く花。凛とした強さを持つ花です。故人はどんな人だったのか、何も書...
ふくろうに聞け快楽のことならば 夏井いつき「梟(2020復刊)朝日出版社」 梟は留鳥。一年中いる鳥ですが冬の季語になっています。歳時記には「冬の夜に梟の声を聞くと凄惨な感じがするので冬季になっている」と記されています。 ローマ神話では知恵の女神ミネルヴァの使いで叡智の象徴。また哲学者ヘーゲルの次の言葉でも知られます。...
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