いよかん「伊予柑(春)」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

伊予柑を剝くとき痛し腱鞘炎   石田郷子「草の王(2015)ふらんす堂」

蜜柑は冬の季語ですが、伊予柑は春。一月から三月に収穫されます。伊予松山に三年間勤務した経験のある私。本場の伊予柑の美味しさに目覚めましたが、剥きにくさも実感しました。皮が固く、なかなか爪が立ちません。やっと爪を立てても剥くのに力が入ります。腱鞘炎が痛んだという作者。そうだろうな、と共感します。他に剥きにくいものを妻に尋ねてみると筆頭が柘榴。まず割るのが大変。皮が厚くて硬くて、しかも果肉は種だらけ。次にニンニク。チューブや瓶のおろしニンニクが売れるのは剥きにくいからでしょう。続いて芽が出たじゃがいも。でこぼこしている上に、芽をほじらなければなりません。侮れないのが冬瓜。見かけよりずっと皮が硬いんです。意外なところでは、しおれた蜜柑。萎びて皮が身にくっついている上に、皮が破れやすい。並べて見ると、やっぱり伊予柑が一番腱鞘炎になりそうです。この小文を覗いていた妻がひとこと。伊予柑は剥きにくいからこそ、苦労して剥いたあとは一層美味しく感じられるのでは、と。なるほど。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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