はる「春 時候」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




鉄橋の三角三角春がくる   ふけとしこ「眠たい羊(2019.7.7)ふらんす堂」

よく見ますよね、あの三角形を並べた構造。ですが俳句に詠むのは珍しい。あれ、トラス構造と呼ぶそうです。三角形は四角形に比べて強い構造。試しに、紙で三角形と四角形を作ってみください。指で押すと四角形は簡単に変形します。一方、三角形は揺るぎません。この性質を利用したのがトラス構造。力学的に強い三角形を並べ、少ない鉄骨で大きな重量を支えようというものです。掲句、難しい建築用語を用いないで三角三角と言ったところが楽しい。積木遊びのようになつかしく、リズムが生まれます。そこを緑色の電車がごとんごとんと走りぬけてゆきます。電車のあとを春が追いかけて来ます。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






おすすめの記事