ギャンブルのようなもの。リスクが高いほど収益も高くなります。ちなみに競馬の必勝法は、穴の馬に賭け続けることだそうです。ここでいう必勝とは勝ち数が負け数を上回ることではなく、賭けた金額を回収した金額が上回ることです。いくら勝ち越しても金額で損をしては哀しいですからね。ある理論によれば、テッパンの馬はリターンが低いため、長い目でみれば損益分岐点を下回り損をするそうです。投句も同じように、少々の冒険が不可欠。先生のコピーのような句を作り続ける人もいますが、それでは大きな成功はのぞめません。
ところでNHK俳句には、毎週数千の投稿があります。そのうち入選作はたったの九句。厳しい戦いと言わざるを得ません。インターネットによるものと、ハガキによるものがあり、ネット投稿が数では過半数を占めます。ところが選者の方に伺うと、内容はハガキのほうが圧倒的に優れているとのこと。ネットでは無料で何句でも投稿できますが、ハガキは64円払った上に、一葉に一句しか書けない決まりです。当然、一句に対する集中力に大きな差が出ます。またハガキは自筆で投稿するので作者の人柄が文字に表れます。美しい字や迫力のある字はおのずと選者の目を捉えます。毛筆や万年筆で丁寧に書かれた文字は内容を保証しているようにも思われます。これらの諸要素を勘案すると、ハガキのほうが入選の確率が高まるようです。
ただし、目立たせようとして蛍光ペンで句をマークしたり、花柄で句を囲んだりするのは逆効果。いや、結構いらっしゃるんですよ、そういう方が。いい句はそんなことをしなくても、目に飛び込んでくると選者はおっしゃいます。また、間違った字をペンでグジャグジャ塗りつぶすのもご法度。番組の事ではありませんが、ある著名な俳人が修行時代、締切まで時間がなくてそういう投稿をしたことがあったそうです。普段柔和な先生から直々に電話がかかってきて、厳しく叱責されたとのこと。足が震えたとおっしゃっていました。