ばんぐせつ・万愚節【超初心者向け俳句百科ハイクロペディア/蜂谷一人】

万愚節とはエイプリル・フールのこと。この略し方はとってもお洒落。カタカナを漢字にして音数を縮めただけでなく気分をぴたりと言い留めています。バイスクルを自転車と訳した昔のひとのセンスを感じます。

植木屋は頭上に休む万愚節   一人

さて、この句を見て思い出す人はいませんか?絶対ご存知のはず。ほら有名な植木屋さんですよ。ほら、あの…。天才バカボンのパパ。よく木の上で昼寝をしていたじゃありませんか。パパにとっては毎日が万愚節のようなもの。罪のない嘘をついて皆を慌てさせるのが大好きなんですから。

ところが或るときこの句を英訳することになって問題が生じました。英人の翻訳家に「なんで植木屋が頭上で寝ているのか、さっぱりわからない」と言われ、バカボンをわかってもらうのに一苦労。俳句の理解には日本文化の幅広い知識が必要と身に染みました。

俳句は短い詩。いちいち説明するには字数が足りません。日本に住んでさえいれば、言葉にしなくてもわかる知識があります。バカボンに限らず、秋といえばもの悲しく、コスモスは小学校を思い出させ、稲といえばこうべを垂れるもの。こうした暗黙知のおかげで、私たちは俳句を楽しむことができるのです。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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