過ぎゆく春を惜しむこと。情感の大変豊かな季語ですが、案外使い方が難しいのです。俳句さく咲く!で詠まれた句をみてみましょう。
ぼんやりと水月眺め春惜しむ 上西星来
水月は水に映った月。映像的な句になっています。ところが 眺め、惜しむと動詞が二つ。動詞二つは許容範囲ではありますが、やはり句がもたついています。櫂未知子さんはこの句をこう添削しました。
惜春や水月ぼんやりと眺め
せきしゅんや すいげつぼんや りとながめ
句またがりで美しくまとまりました。春惜しむのように動詞が入った季語は、惜春のような名詞形に変えてしまうのも一つのやり方。添削例では「や」切りでかたちがよくなり、動詞がひとつになってすっきりしています。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」