たかのすじゅう・高野素十(1893~1976)【超初心者向け俳句百科ハイクロペディア/蜂谷一人】




くもの糸一すぢよぎる百合の前

大正末期から昭和初期にかけて活躍した4Sといわれる俳人たちがいます。水原秋櫻子、山口誓子、高野素十、阿波野青畝。いずれも高濱虚子の門人です。秋櫻子と素十は東大の医学部出身で友人。秋櫻子が虚子の写生にあきたらなくなり、和歌の要素を俳句に加えようとして離れていったのに対し、素十は写生を信奉し、生涯 虚子に従いました。「俳句の道は ただ これ 写生。これ ただ 写生」という言葉を残しています。

掲句は素十の写生の眼が生きた一句。蜘蛛の糸が一筋。それが百合の前にある。非常に細くすぐ切れてしまいそうな蜘蛛の糸と大輪の百合の花との対比が鮮やかです。蜘蛛の糸がよぎる一瞬、きらりと百合が輝くような効果をあげています。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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