でんそかしてうずらとなる「田鼠化して鶉と為る(春)」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】

田鼠化して鶉となりふむふむ  佐怒賀正美「無二(2018)ふらんす堂」

辞書には「七十二候の一つ。清明の二候。陰暦四月十日から十四日の間。田鼠はもぐら。鶉はフナシウズラ。もぐらがうずらになるという実際にはありえないことだが、夜になり地中のものが地上に出て活動すると考えることができる」とあります。七十二候とは「旧暦で1年を72に分けた5日、または6日間を1候とし、その時候の変化を示したもの(広辞苑)」辞書がないと読めない句ですが、わかってみると誠に面白い。一句の大半が七十二候から出来ていて、オリジナルの部分は「ふむふむ」だけ。なんと省エネ、かつ大胆で繊細な句作りなのでしょうか。きっと作者も辞書を取り出して七十二候の解説を開いているのでしょう。だから「ふむふむ」。読みながら納得しているのです。「ふむふむ」が「踏む踏む」に見えてきて、鶉がもぐらを踏みつけているような想像が働きます。このとぼけた感じが、まさに春の気分。季語が動きそうで、実は絶妙にはまっている一句だと思いました。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html

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