石投げて池に氷や白く撥ね 上田信治「リボン」
この句は「石投げて池に氷や」という前半と「白く撥ね」という後半に分かれています。間をつなぐのが切字の「や」。丹念に読んでゆくと構成の面白さに気づきます。
まず「石投げて」で遊びの様子を描写します。石が水面を跳ねてゆく水切りです。と思ったら池に氷が張っていたよ、と軽い驚きが示されます。その驚きが「や」で強調されます。
続いて後半の「白く撥ね」。ここで石の様子が描かれます。白い石だったのかもしれませんが、ここは氷を削り氷片を巻きあげて白く光ったと読みたいところ。そして最後の「撥ね」は連用形。終止形は「撥ぬ」となりますが、終止形をとっていないので、この後も撥ね続けるような印象を残します。わずか十七音に、動画のような一連の動きを詠みとめた一句。映像の再現力の鮮やかな作品です。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」