目次
木下夕爾の俳句一覧
春
未分類
- あくびしていでし泪や啄木忌
- かたつむり日月遠くねむるなり
- この丘のつくしをさなききつね雨
- こほろぎやいつもの午後のいつもの椅子
- たべのこすパセリのあをき祭りかな
- てのひらにうけて全き熟柿かな
- とけてゐるアイスクリーム秋の蟬
- とぢし眼のうらにも山のねむりけり
- にせものときまりし壺の夜長かな
- ふりいでし雨の水輪よ休暇果つ
- ふりむいてまだ海見ゆる展墓かな
- 児の本にふえし漢字や麦の秋
- 兜虫漆黒の夜を率てきたる
- 冬の坂のぼりつくして何もなし
- 噴水にひろごりやまず鰯雲
- 地球儀のあをきひかりの五月来ぬ
- 地球儀のうしろの夜の秋の闇
- 家々や菜の花いろの燈をともし
- 寒林に日も吊されてゐたりしよ
- 少年に帯もどかしや蚊喰鳥
- 枯野ゆくわがこころには蒼き沼
- 梟や机の下も風棲める
- 水ぐるまひかりやまずよ蕗の薹
- 泉のごとくよき詩をわれに湧かしめよ
- 海の音にひまはり黒き瞳をひらく
- 海鳴りのはるけき芒折りにけり
- 炎天や昆虫としてただあゆむ
- 秋天や最も高き樹が愁ふ
- 稲妻や夜も語りゐる葦と沼
- 花蕎麦に雲多き日のつづきけり
- 遠雷やはづしてひかる耳かざり
- 鮟鱇に似て口ひらく無為の日々
- しその葉に秋風にほひそめにけり
- 夕焼のうつりあまれる植田かな
- たたずみてやがてかがみぬ水草生ふ
- ネオン赤き露の扉にふれにけり
- つくねんと木馬よ春の星ともり
- 友も老いぬ祭ばやしを背に歩み
- 秋刀魚焼かるおのれより垂るあぶらもて
- 冬凪や鉄塊として貨車憩ふ
木下夕爾 プロフィール
木下 夕爾(きのした ゆうじ、1914年10月27日 - 1965年8月4日)