けいとぼう「毛糸帽(冬)生活」【最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」/蜂谷一人】




荷役終へたる駱駝の瘤に毛糸帽  草野早苗「ぱららん「(2020)金雀枝舎」

作者は詩人。それだけでなく別の顔もお持ちのようです。著者略歴を見ると、海外営業従事 インド、ロシア、アジア諸国を出張訪問とあります。なるほど海外を訪問することの多い作者であれば、駱駝の荷役も実際に見聞したのでしょう。日本人が想像する駱駝は乗り物。砂漠の舟と呼ばれるくらいですからね。しかし荷役まではなかなか頭に浮かびません。しかも、瘤に毛糸帽とは何ともリアル。私は瘤に帽子を被せられた駱駝を見たことはありませんが、確かにあるのだろうと想像はできます。砂漠の夜はきっと寒いのでしょうから。飼い主の優しさを感じるとともに、写真を撮りたくなるような映像も目に浮かびます。海外詠はなかなか難しいものですが、毛糸帽という季語がよく働いた一句だと思います。ちなみに「駱駝、毛糸帽」とネット検索してみると、駱駝の毛で編んだ帽子しかヒットしませんでした。やっぱりね。万能のインターネットをもってしても、駱駝の瘤に帽子を被せるという発想は出てこないのです。ネットよりも詩人の眼の方が確かと、確信しました。

 

プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」

公式サイト:http://miruhaiku.com/top.html






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