ひとしきり猫の嗅ぎたる青写真 櫂未知子「カムイ(2017)ふらんす堂」
青写真は昔の子どもの冬の遊び。日光写真とも言います。漫画などを白黒で印刷したネガフィルムに印画紙を重ね、日光に当てます。しばらくして水洗いすると映像が浮かび上がります。感光している間は、動かせません。図柄がずれてしまいますから。猫たちも、なんだか見慣れないものが日にあたっているのが不思議なのでしょう。匂いを嗅いでみたりしています。でもつまらなくなって、行ってしまいました。「ひとしきり」という言葉でそれが分かります。その様子をじっと見ている作者。冬の日ののんびりとした景色が浮かび上がります。青写真は、最近では見かけなくなった季語。句集に収められることで、次の世代へも受け継がれてゆくのでしょう。
プロフィール
蜂谷一人
1954年岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。「いつき組」「街」「玉藻」所属。第三十一回俳壇賞受賞。句集に「プラネタリウムの夜」「青でなくブルー」
最近の句集から選ぶ歳時記「キゴサーチ」(冬)